求めるもの。

ニューアルバム発売について思う所もあって連日ベビーメタルについてしか書いていませんが、今回で最後。

好きなバンドのアルバムを一番初めに聞いた時、「おお、これは良いな!」あるいは「ああ、こういう感じかー」と自分の中で好き嫌いの判断を付けるのは当然だと思います。そういうイチファンの感想として、今回のアルバムに対する評価は前回、前々回の記事にある通りです。

作品の出来以外で気になった事を書いて、ファンの戯言を終えようと思います。

言いたい事は要するにひとつしかありません。

燃え尽きて欲しくない。

どういう事かと言いますと、やはり新作発売のタイミングという事で、雑誌やテレビでのインタビューを目にする機会も増えました。主にフロント3人の言葉を見て、聞いていると、バンドのとしての将来性に不安を感じてしまうのです。いい子達なんだろうな、と思います。受け答えや言葉の使い方にも品があって、真面目で、誠実。親の躾が良いのか、働く環境が良いのかわかりませんが、天才子役を見ているかのようです。

どこまでが彼女達自身の言葉なのか、はたまた大いなる筋書きに沿っているだけのセリフなのか本当の所はわかりませんが、どうしても「おいおい」と思ってしまうのが、メタルへの目覚めです。

スー、モア、ユイ、3人ともが口にする。

「最初は聴かなくていい音楽だと思った。だけど耳で聞くだけじゃない、心に響く音楽だ、無意識に体が動く、他のバンドを見ていて今も何を叫んでるかわからないけど伝わるものがある」

これがもし本心なんだとしたら、ベビーメタルというバンドの方向性がよりメタル側へと大きく傾いていくことは想像できます。

アイドルとメタルの融合、なんて言いながら仕掛け人も演者もとりまく環境の8割方がメタル畑の人間で、NHKで彼女達にインタビューしたのも元メガデスでした。

ファーストアルバム発売から2年、今や主戦場は海外と言っていい。

その彼女たちが今でも「メタル?全然わかんないですね」とは言わないだろう。人間性からして言わないだろう。実際、全身で爆音を感じ続けて得た素直な感想なのだろうから、彼女達から上記のような言葉が出てくるのは仕方のない事だと思います。

問題は、ベビーメタルといのはメタルバンドじゃないという事です。

少なくともフロント3人はさくら学院出身のアイドルのはずです。

この認識はもう古いのでしょうか?

アイドルがメタルを好きになる事、演じる事になんら問題はありません。

しかしアイドルを脱ぎ捨てメタルバンドへの道を突き進み始めた時、バンドの崩壊が始まると思っています。

彼女たちは最初から踊っていた。最初からデスボイスなど出さなかった。

しかしバックには神バンドがいる。世界を舞台に戦える演者がサポートしていることと、類い稀なる作詞家、作曲家がいることで、世界にいともたやすく受け入れられてしまった。「不思議なメタルバンド」として。

それは、kawaiiでありナンダコレが素直な意見だったはずの現象が、いつしか普通のベビーメタルファンの盛り上がりになり、世界共通になり、違和感や不思議はなくなるでしょう。

それは物凄く素敵なことでもあるけれど、アイデンティティを失う危険を孕んでいるとも思います。

彼女達3人がメタルを理解しはじめ、好きになり、メタルとともにあることが当たり前になった時、どうしてアイドルとしての成長が望めるでしょうか。

現時点でスーはもう、アイドルを超えた顔をしている。

メタルとまではいかなくとも、既にミュージシャンの顔で、堂々を世界に向けて歌声を響かせている。

素晴らしい。素晴らしいが、まだ18歳です。

アイドルとしてのピークがいつなのかわかりませんが、今アイドル道を突き進まずしてどこへ向かうと言うのでしょうか?

世界一のメタルバンド?

嬢メタル界の一番を目指す?

世界のメタルファンは彼女達に、それを求めているでしょうか。

何度も書いていますが、アイドルとメタルの絶妙な融合。

それが彼女たちの強みであり世界を虜にする唯一の魅力だと思っています。

メタル環境ににあってこそ、彼女達にはアイドルを極めてほしい。

これまでメタルを聴きまくって来た私みたいなオッサンや、世界のメタルファン相手に「可愛いは正義!」と堂々言い続けてほしいのです。

メタルいいですよねー、とか、胸に来ますね、なんて優等生な発言より、

「みーんなー、はっじまっるよー!」といつまでもお道化ていてほしい。

彼女達のような愛らしい女の子3人がメタル愛を語り出すと、きっと周りの大人は喜ぶでしょう。そして、じゃあもう少し、もう少し、とメタル寄りの曲が増えていき、ファーストアルバムで見せたアイドルソングをメタルアレンジで仕上げる作業を放棄し、メタルソングを歌う女の子3人に作り替えてしまうんじゃないか、と本気で思っています。

世界はそんなに甘くないと思います。

もっともっと格好いい、すさまじいパフォーマンスを見せる嬢メタルバンドがたくさん居ます。そんなところへ突っ込んでいってほしくない。

いつまでも唯一無二の存在として、他の追随を許さない孤高の存在として、

「可愛いけど格好いい!」を振りまいていってほしい。

まだセカンドアルバムが出たばかりの段階で、ここまで考えることの方が異常なのだと、ただの妄想だ馬鹿野郎、といつか思わせてくれる事を祈りつつ、どうかこのまま燃え尽きないでほしい、と願う今日この頃です。