レビュー。

前回の記事を読むと、大好きだと言ってるくせにほぼネガティブな事しか書いていないので、敬愛の気持ちをちゃんと込めつつ全曲レビューしたいと思います。



2016年4月1日発売
BABY METAL 2nd ALBUM
「 METAL RESISTANCE 」
(初回生産限定盤)(DVD付) Limited Edition, CD+DVD
なんかクリアな丸っこいシールもついてました。おまけかな。



1. Road of Resistance

 この曲をアルバムに入れるならおそらく1曲目かラストだろうな思ってました。アップテンポでファンのテンションを上げまくるのが目的のファストチューン。DFが絡んでいるから音がもうダメです。あとやはり長い。メタルナンバーで5分以上ある曲って変拍子をうまく使った傑作か、無駄な部分が非常に多い自己陶酔感の強い駄作かしかない。ファーストアルバムでも基本1曲目の自己紹介ソングは飛ばす。なので今回も飛ばす。要するに…。



2. KARATE

 良いと思います。ミドルテンポ。音に関して特筆すべき事はないけれど、ベビメのチャームポイントの一つであるユイモアの合いの手が可愛い良質なナンバーだと思います。ただ曲のタイトルが最悪。誰がつけたんでしょうか?海外に媚びすぎです。NHKの特番で元メガデスのマーティーも言ってましたよ。「日本語歌詞で歌う方がいい」って。誰かを好きになった時、人は好きな相手をもっと知りたいという欲求で動くものでしょう?それをこちらから分かりやすく、THE NIPPONな言葉を差し出して「こういうのが好きなんでしょう?」というやり方は相手を馬鹿にしているとさえ思います。空手の心を歌った曲なのだとしても、空手ってつけちゃ駄目です。



3. あわだまフィーバー

 AメロBメロを歌うスーの歌声を聴いて、あー、上手くなったなーと思える伸びやかなファストナンバー。ただ「あわ〜あわ〜あ〜わだまフィーバー♪」というユイモアのスクリーム(?)が可愛すぎて記憶に残るのはそっち。この曲と次のヤバッ!を聴くと、やはりアイドルとメタルと打ち込みサウンドを掛け合わせるのが本当に上手い製作者がついてるな、と感じます。



4. ヤバッ!

 今回のアルバム、前半最大の目玉でしょうね。イントロからして気合が違う。作り手もこの曲楽しんで作っただろうな。歌メロと大サビ、間奏、音使い、全て完璧。いみじくもバンドサウンドというより「いいね」に近いデジタルサウンドなのが、もったいないとも言える。神バンドの力量なら全てのアレンジを生楽器でやれたはず。ただ、そこにこだわらず、打ち込みを全面に押し出してきた音の組み立てが本当に気持ちよく、リズム感もテンポも最高だと思います。そして何より知ってる人は知っている、V系の異端児carigariを彷彿とさせるノリが個人的にツボなのです。石井が絡んでるじゃないかと思うほど、似ている。



5. Amore - 蒼星 -

 前回の「紅月」の続き、的なことをインタビューでスーが言ってましたが、じゃあなんでこうなった!?と眉間に皺を寄せてしまいます。アカツキ、格好良かったですよね。めちゃくちゃ好きです。ゆったり歌い上げのイントロを経て、助走を付けてから全速力で走り出す「生バンドの演奏力」たるやメタルナンバーの真骨頂とも言える破壊力と様式美がありましたよね。こんなDF感丸出しのピコピコハンマーでファーストアルバムを聴いて育ったベビメファンを倒せる思ってんのか。スーが可哀想だ。アカツキを超えるポテンシャルを持った曲だと思うので、余計に腹が立ちます。



6. META!メタ太郎

 コミックソングかな? 3人が交代でボーカルをとる歌い出しは貴重で可愛いと思いますし、なんか面白いことやろうとしたんだなーというのは分かますが、曲のクオリティが…。企画ありきな匂いもしますしね。
大サビの部分から一足飛びに高速リフに発展してたら素晴らしい曲になったと思います。


7. シンコペーション

 スーの魅力が詰まった良い曲だと思います。いい意味で歌謡曲丸出しで、だからこそバックのヘヴィな音とスーの癖のない歌声が際立つわけです。メロディーは特に目立った何かはないのですが、聴くたびに味の出るタイプのスルメソングだと思います。ただ、迫力を付けたかったのは分かるのですが、ドラムの音が前に出すぎていてちょっとうるさいです。この場合のうるささは、メタルとは関係ない意味です。生バンドでやってこそ真価を発揮する曲なのじゃないでしょうか。



8. GJ!

 これGJ!っていう歌なんですね。最高に可愛い曲。後半のハイライト一曲目。スーだけでなくユイモアも若干の声変りを経て、ちゃんと声が出せるようになったな、と成長を楽しめるナンバー。こういう日常レベルの歌を無理のない声で歌い、バックが全力でメタルに仕上げる、という構図がベビメの理想だと思うので、そういう意味でこの曲は完璧。今回のアルバムにはドキドキモーニングやウキウキミッドナイトのようなティーンの日常を描いた曲がこの一曲だけなので、そういう意味でも貴重です。ただブラックベビーメタルの曲は、聴いているとどうしてもモアの声ばかり耳に入ってくるのですが、これもそう。ちゃんと二人揃って歌っているとは思うのですが、声質なのか、声量なのか、モアが一人で歌っているように聞こえます。ユイ頑張れー。



9. Sis. Anger

 あ、ユイ頑張ってる!?と思った曲。後半ハイライト2曲目。スーには申し訳ないが今回のアルバムで抜群なのが4.8.9なので、ユイモアに軍配が上がりますね。この曲も可愛い!なにより全曲通して一番ヘヴィなサウンドなのがこのSis.Anger。メタリカのSt.Angerからもらったタイトルでしょうね。全然曲は似てないですけどね。「お前のその根性叩き直すぞ〜」「ごめんねぇ?許して?どうしよっかな〜」は考えた大人のいやらしさにまんまと嵌められた感あります。こんなん可愛いに決まってる。可愛いは正義ですから、アリですけどね。8と9ではボーカルの声質が少し違うんですよね。より高い声。なのでモア色が少し抑えられてユイの声がよく聞こえます。何度聞いてもニヤけてしまう裏キラーチューンです。



10. NO RAIN, NO RAINBOW

 前回「悪夢の舞踊」がスーのソロ曲として光り輝いていましたが、今回はピュアバラード。なにもここまで抑えなくても、と言いたくなるほどメタル感ゼロです。メタルのパワーバラードって本当はボーカル並みにバックの音も聴きごたえあるものなんですけど、全然記憶に残らないです。あー、ギターソロ来るだろうな。来たな。くらいです。ただ歌の上手さには本当に感心する。18歳のアイドルでここまで歌える女の子は今日本にいないんじゃないでしょうか。いやアイドルじゃなくなって、そうはいないと思います。というかいない。ただね、やはり若い女の子が歌うにしては、歌詞に年齢が追い付いていないと言いますか。「絶望さえも光になる」とか、18歳に言われても、ね。



11. Tales of The Destinies

 変わった曲ですね。面白いと思います。ただ、どう表現するべきか迷ったのですが、「噛み合ってない」気がします。序盤の可愛さとサビの歌い上げは良いのですが、まとまっていないというか、変拍子だけが耳についてしまう。アレンジでもう少しなんとかなったはず。ユイモアの「ないない」は可愛いし、今作で一番声が出てるんじゃないかとすら思うスーのボーカルが圧巻なだけに、あと一歩で名曲入りするんだけどなー!という思いがある。何度も聞けば慣れてきて気持ちよくなると思いますが、一発でノックアウトされる曲に仕上げて欲しかった!


12. THE ONE

 んー。・・・んんーー。
 こういうのが嫌なんですよ!これアイドルが歌う曲じゃないですよね。なんでこれをベビメでやろうと思ったんかな。この曲を聴いて、あー、やっぱりメタル方向に比重を掛けて行く気なんだろーなと懸念が現実味を帯びてきました。曲はそこまで激しいメタルじゃないんですけど、世界観がメタルなんですよね。アイドルや歌謡曲にはない空気というか。いや、それでも中身はバッチリアイドルソングでした、なら良いのですが、この歌詞を彼女達3人に大真面目で気持ち込めて歌わせるとか・・・ギャグじゃないなら何がしたいのでしょうか。


「総評」

ファーストアルバムを超えたのか!?
というのはやはり作り手もファンも大いに期待する所、不安に思う所だと思います。DFこっち見んな、なんで関わってきたんだ、という個人的な不満を抜きにして純粋に聞いた場合。答えはノーです。事実ですし、絶対です。
これは仕方のないことだと思います。ファーストアルバムが大ヒットしたバンドの宿命とも呼べる物です。満を持して、粒揃いナンバーでのデビュー、2年という月日、その年月でファンはファンとして育ちました。思い入れも違うし、求めるものがそれぞれ決まってしまった。特に思い入れのない人達は、音質や曲のスピードなどでアルバムの良し悪しを決めがちです。しかしベビーメタルってこういうバンドなんだ、こういう所が魅力なんだよ、こういう所が好きなんだよ、という個人的だけれど強い拘りを持ってファンになってしまった人達が聞くと、絶対に今回のアルバムは前回の域にまで届いてはいないはずです。
単純に、I.D.Zクラスのキラーチューンがない。この曲がなければベビメに嵌る人口は大幅に減っただろう、と思えるほど偉大な曲。それを超えるとまでいかなくとも比肩する程の完成度を持つ曲が欲しかった。おそらく作り手側としてはDFの曲がそうなんだろうけど、普通に、DF絡んでいなくても、そこまでの曲ではないでしょう。
加えて、アルバム全体を通して聞いた時に、いわゆるアイドルらしさ、可愛さが足りない。ベビーメタルって自分たちで標榜している通り、アイドルですよね?アイドルとメタルの融合ですよね。今彼女たちを見て思うのは、日本の10代の女の子3人が、メタルミュージックに挑戦している、という図式にしか見えないという事。これは致命傷です。メタラーになってほしくなどないんです。その素質はほぼゼロだと思いますよ。そもそもメタルにダンス、必要ないですし。スーの歌もキレイすぎます。そこじゃないんですよ、彼女たちの魅力は。アイドルとメタルの「融合」。本来棲む世界の違う物同士を掛け合わせた時に起きた、唯一無二、奇跡の世界観が彼女たちの魅力だったはず。もちろん、そこにはフロント3人のアイドルとしての可愛さが大前提としてあって代わりは効かない。そのアイドル3人が、なぜか今メタルを少し理解しはじめ、そちらの世界を受け入れ始め、馴染んでしまっている。実際戦っている場が世界なのだからある程度は仕方ないとしても、自分たちの看板であるアルバム制作は、ぶれずに初志貫徹してほしかったです。

色々またネガティブな事書いてますが、ファーストアルバムを超えてはいない、というだけで、一つのアルバムとしての出来はもちろん素晴らしいと思います。このまま彼女たちがどういう方向へ向かっていくのか非常に悩ましい所ですが、音源として楽しむ分には十分すぎる出来だとは思っています。セカンドがファーストを超えないジンクスはどのバンドでも同じです。今後3枚、4枚出してほしいし、そうなってくるとまた話は違ってきます。思い切ったメタル方向へのシフトが行われるか、はたまた原点回帰を果たすのか。
今から楽しみです。