考えない人。

もしくは考えないで良いと判断している人。それはつまり考えているともいえるのですが、結果的に誰かを苛立たせる事にも繋がるし仕事上効率的ではない事がよくあります。
一言でゆとり世代と呼んで片づけたくはないし、実際どの年代をそう呼ぶのかも範囲が広すぎて定義も諸説あり曖昧です。
私も幾分年を取って、ひとまわり以上年下の人間と一緒に仕事をしていて感じることもありますし、また人によっては全然考え方にギャップを感じない事もあります。
人それぞれだとは思いますが明らかに考えていない人は存在します。
そしてそれは私の年代からすると理解しがたい事だったります。
年代など関係ないのかもしれませんが、仕事の出来不出来、ミスをするしないに関わらず理解出来ない事が増えてきた事に対し、年代の違いに原因を感じてしまうのです。私自身、経験もそこそこ積んできて、色んな人間を見て来たにも関わらず、理解出来ない人が増えてきました。
これもまた考えてみると恐怖です。


例えばこんな場面。
誰かに物を片づけてほしい時に指示を出すとします。
指示を出す相手は、3年間同じ職場で働いているベテランバイトの女の子。



「そこの黒い奴直しといてね」


という言葉と、


「そこの作業台の前にある黒い段ボールを元の場所に片づけてね」



という言葉では明らかに表情も、挙動にかかる時間も、変わってきます。
この差が、考えていない人、と私の目には映るのです。
後付けになりますが、黒い段ボールを片付ける、という仕事は初めてではないものとします。そしてその黒い段ボールは私とその女の子の間に存在するものとします。お互いが見える場所に存在します。
この状況で尚、


「そこの黒い奴直しといてね」


という言葉だけではキョトンとされる事が多々あるわけです。
どういう指示を受けたかわかっていない顔をします。
「えっと、…この黒い段ボールですね? …片づけとくんですね?」
としばらく経ってから聞き返してきたりします。
(読み返していて気づいたのですが、片付ける=直すの方言が伝わっていない、という話ではありません。念のため)
理解出来ません。
言われた事はちゃんとやる子です。逆らったり嫌がったりする子ではありません。しかしなるべく事細かく、噛み砕いてこれ以上ないくらい適切な指示を出してあげないと動けない人間なのです。
そしてそれは決して彼女だけに留まらず、若い世代には良く見受けられる現象なのです。



いくつか原因が考えられます。


「理解力の欠如」
「責任の放棄」
「集中力不足」
「マシーン」


等です。
「理解力の欠如」。
これはいわゆるコミュニケーション障害にも通じる物です。相手との会話で、相手の意図を汲み取り適切な言葉を返す事が苦手である。相手の気持ちをうまく理解出来ない、出来ていてもスムーズに返事を返せない、タイミングがずれるといった人だと、受けた指示に対して素早い挙動が見込めない理由に納得できます。
次に「責任の放棄」。
例えば仕事の指示を受けた際にある程度曖昧な言質に対しても機転を利かせて対応出来たとします。しかしその場合、勘違いしており指示とは違った結果を招いてミスをする可能性もゼロではありません。それが嫌で、曖昧な指示には従いませんというスタイルを貫く姿勢を見せる為に、正確な指示を聞くまで分からない振りをする。責任は自分ではなくあくまで指示を出す側にあるんですよ、という態度ですね。実際そうなのですが。
次に「集中力不足」。
そのままですね。恋に勉学に忙しい年代の子も多いですから、週何回かのバイトに「本気を出せ」というのも酷かもしれませんが、少ないながらも給料を受け取るであれば、勤務時間ぐらいは集中して欲しいものです。
「マシーン」。
これは複合技ですね。本当に悪気無く、「言われた事しか出来ない人間」がいるという事です。その原因が、集中力不足なのか、責任転嫁なのか、理解力がないのかわかりませんが、応用力が全くない。前回似たような仕事をやったにも関わらず、言葉がAからBに変わっただけで別の仕事みたいな顔をする子がいます。聞いてません。分かりません。と真顔で返事します。言ったし、やったことあるじゃん、と思うのですが、通じません。
何度も言いますが、理解出来ません。
これまでの事は全て推測であり、実際には彼ら彼女らが何を考え、または何故考えないのか全く理解していません。
この先この子はどうやって生きて行くんだろうと心配にさえなります。
余計なお世話なのかもしれませんが、もっと「ちゃんと見ろ」「ちゃんと聴け」「ちゃんと考えろ」と言いたいです。
しかし悲しいかな言っても届かないと思います。
顔を見ていて思うのですが、悪気があるわけではなさそうなので。
100%ピュアな顔で「はい」と元気よく返事するくせして「なんの事か分かっていない」なんて日常茶飯事です。
「本当に分かってる?理解してる?」と聞き直すと、「いや、すいません」としょんぼりする子を何人も見てきました。
何度でも言います。理解出来ません。




仕事の「通り道」にバイト達を立たせるようにはしています。
スタート地点や、ゴールに立てるバイトはそんなに多くいません。
アクションを起こしてから事を終えるまで。
始まりと終わり。
その「途中」にバイト達を配置する事によって、人手不足の解消とこなせる仕事量の増加を図ります。そしてあまり責任のないポジションに置く事で、とんでもないミスやありえないクレームをある程度防ぐ事は可能です。ゼロにはなりませんが。
一つの仕事を責任者が始め、バイトに手伝ってもらい、責任者が終える(チェックする)。
しかし人を使う立場で仕事をしていて思うのは、「自分が10人、いや5人いればどんなに助かるだろう」という事です。
1から10まで任せられる従業員が1人増えるだけでどれだけ成果が上がるか、という事を日々考えてしまうからです。
ですが実際そう上手くは行きません。
どれだけミスなく、問題なく事を終えるかという事に集中してしまって、なかなか上を目指すという段階にまで辿り着かないのが現状です。
そんな中、



「そこの黒い奴直しといてね」



という簡単な指示にですらキョトンとされてしまう毎日です。


装飾を一切省いた簡単な言葉だけでは動けない。
理解し切れなくて適切ではない事をする。
理解出来なかったにも関わらず聞き返さない。
聞かなかった事にして再度指示されるまでやらない。
何度も繰り返さないと仕事を覚えない。
覚えが悪いにも関わらずメモを取らない。
指示がないと動かない。
どうでも良い事に対してだけ細心の注意を払う。
毎日小さなミスをする。
返事だけ素晴らしい。
会話が続かない。
笑顔の向こうの感情が読み取れない。
出来る振りして出来ない。



そりゃあ「もっと考えろ」と言いたくもなりますよ。
というお話でした。