川村カオリと『眠兎』

今日金スマで特集やってたね、川村カオリ。今日は泣かなかった!踏ん張ったぞ俺。俺が泣いても仕方ないし(意味があるとかないとかの話じゃないけど)、幸せ面してる他人の何倍も頑張ってる人を泣きながら見るのってどこか可哀想がってる気がして、それはおそらく言いすぎなんだけども、同じレベルで共感出来ないくせにどこに感情移入して泣いてんだ、って気持ちが、自分の中にある気がして、堪えた。
彼女は今一番辛いし、だけど何もなければ気付かない周囲の優しさや助けを実感して、辛いのと同じだけ幸せなんだろうから。ただ辛く、痛く、しんどいだけの人よりも何十倍もそれは幸せなことだろうから。俺もそっち側に回りたいから、応援し続けます。

本日発売になった、

集英社刊「浅田弘幸作品集2 眠兎」浅田弘幸著(文庫版)

を読んで。何年ぶりに読んだかな。もちろん、単行本全2巻も読んで持ってるんだけど、数年前に引越しを2回程した時のダンボールがまだそのままクローゼットにに放置され、部屋の本棚に並んでいない漫画がたくさんあって、この眠兎もそこで眠っています。作品自体91年とかの時代なので、15年以上読んでない事になる。だけどこの漫画から受けた影響は今でもたまに内側から外側に出てきます。影響っつっても印象的な台詞だったり、キャラだったり、中原中也の詩だったり、その時その時によって違んだけれど、今回読み返して新たに思う事柄も出てきて、また違った影響を受けそうです。
この作品はね、初めて漫画を超えてるなーと思えた物語です。
ストーリーの基盤は、トラウマから逃げ切れない少年達の成長・青春群像なので、既にみなさん誰もがどこかで感じた事のある、触れた事のあるありふれた感情だったりします。凄いシンプルな話だけれど、それを一切飾り立てず、逆に削ぎ落として単行本2冊に纏めた中身の濃い作品。子供時代は、漫画って絶対的にエンターテイメントだと信じて疑わなかったので、こういう作品を初めて読むと衝撃を受けます。当時の浅田先生の絵が今よりもずっと線の細い、シプルイズベストな画風という事もあって、全てが印象に残る。
そして今回やっぱり、カオリちゃんの特集見たあとだけに強烈に印象深かったのが、「人のために生きたい」という感情の強さ、なんですよね。あと、人は一人では変われないんだな、という今更の実感?一人だと自分の弱さにも気付けないしね。
自分のことはもう良いから(二の次で良いから)、あいつの為に(娘の為に)、ここで死ぬわけにはいかないんだ、という強い気持ちが、ここまで深く切ない所に入って来る感情だったなんて、今更ながら、気付かされました。
絶対、格好付けて使って良い言葉なんかじゃないよね。自分の事もちゃんと見えてない半人前が熱い男ぶって「お前のために生きてる」なんて使っちゃいけない。そんなやわい言葉じゃない。そんな良い人間風の感情じゃない。それこそ、命掛けた思いなんだってことを、思い知りました。