世界が彼を失った。

ココのところ才能溢れるエンターテイナー達が次々にこの世を去っていく。スーパーロックスター・忌野清志郎さんも、年齢的に全然世代ではないけど、その歌声はやっと30になったばかりの俺でも慣れ親しんできた。三沢光晴さんだって、プロレスファンでもない俺でさえ、姿、声、2代目タイガーマスクであった事、当然のように知ってたりする。時代や、ジャンルを超えて、素晴らしいエンターテイナーは人々に何かを残している。
そしてマイケル。世界のマイケル・ジャクソン。King of Pop、MJ。
彼の死は瞬く間に世界中を駆け抜けて、それこそ、「世界中に衝撃を与えた」と言われている。映画の番宣なんかで謳われる「全米が泣いた」なんてありふれたキャッチには何も気持ちを揺さぶられないけれど、今度ばかりは、本当に本当に、「世界に衝撃を」与えた。日本という島国の、関西の片田舎にいる冴えないオッサンが、震えたもの。いまだに信じられない、彼がこの世界にいない事が。
ずっとファンだった。それを隠したこともない。度重なる整形手術で顔の形が変わり、皮膚の色が変わり、子供をマンションから危うい手つきで披露した時も、ファンであり続けたし、少年への性的虐待が騒がれた時も、それは変わらなかった。事実は俺達には分かりようがないし、マイケルがどんな気持ちで今日を生きているのか、そんなことは考えようもない。
一番はっきりしている事は、マイケルが史上最高のエンターテイナーだった事なんだ。
今の若い子達は知らないはずだ。マイケルの凄さを。そんな世代が彼をあざ笑ったり、馬鹿にしたりするのは許せない。ここ10年以上彼は本気の姿を人前に見せていない。
世間的には「スリラー」の売り上げがどうこう、ムーンウォークがどうのといまだに言われているけど、それは彼のほんの一部でしかなく、その作曲力の素晴らしさ、「魅せる」事へのこだわり、パフォーマンスへの飽くなき努力、ピュアな少年のままの生き方、全てが彼を作り上げている要因なんだ。
そこがここ10年人々に伝わっていない。おそらく、テレビで見る「おかしなマイケル」を見て若い世代は、どうしてこんな奴に世界中のファンがついてるんだ?くらいにしか思ってないんじゃなかろうか。
凄い才能あるアーティストなんだ、本当は。
彼の歌唱力をちゃんと聴いたことあるの?
彼の、ムーンウォークを超える人間以上の動きを見たことある?サークル状に回ることが出来るって知ってる?
妹ジャネットと競演した、鬼気迫るダンスバトルを見た?
胸を熱くした人々が世界中にいる。彼の歌声に思わず目頭が熱くなった人も、彼のダンスに鳥肌がたった人も、数え切れないくらいたくさんいる。
誰がどんなに馬鹿にしようが、笑おうが、それは変わらない。
彼は人類史上もっとも人々を感動させたアーティストだった。
King on Popは彼以降もう現れない。
誰かがニュースで言ってた。
「マイケルらしい死に方だった」
どこがだ!あほか!
マイケルは世界中のファンを前にステージの上で逝くべきだった。だだっ広い部屋で、一人っきりで死んでいくような人生じゃなかったはずだ。拳を突き上げて、湧き上がる世界のファンの絶叫に近い歓声を一身に受け、前のめりに笑って倒れるべきだった。
彼がこの世を去ったのと同時に、世界がマイケルを失った。失ってしまった。