懲りない奴ら。

また漫画原作を実写映画化という話が出ていますね。今度は「ジョジョの奇妙な冒険 第3部」ですって。主演の空条承太郎役に山崎賢人さんという若い俳優さんを起用するという情報まで出ています。確かこの山崎さんという方は「キングダム」でも主演されるとか。無茶しますね。顔写真しか見たことがないのですが、おそらくジョジョファンが危惧しているように、190cmの高身長というわけではなさそうですし(実際178cmだそうです)、ガッチリした肉体派でもなさそうです。
どういうカラクリでこんなキャスティング、こんな映画製作が罷り通るのか本当に不思議ですよね。
今回勝手に、自分なりに考察してみました。

当たり前の話ですがビジネスである以上お金が動きます。
これだけ世間の声にボロカスに言われようとも乱発されるという事は、それなりに回収できているという事なのでしょうね。
それしか考えられません。
進撃の巨人」も「テラフォーマーズ」も真剣に作ったにしては苦笑い級の映像でしたが、それでもお金を払って見に行く人がいたという事です。そして、我先にと漫画原作を関係者が抑えにかかる程度には儲けているという事なのでしょう、恐らく。
映画一本作るのにどの程度のお金が掛かるか詳しくは分かりませんが、前後編に分けて制作された「進撃の巨人」は、前編だけで30億円ほどの興行収入があったようです。当初の目標としては50億円ずつ、トータル100億円を見込んでいたがそこまで到達することはなく、実際は後編で20億円に行くか行かないかギリギリのレベルで、前後編合わせて50億にも満たないだろう、という報道でした。
ネットニュースでもこうした原作にネームバリューのある作品や前評判で世間を騒がせた映画などの情報がちょくちょく報じられます。
ここ数年はほぼ、マイナスなニュースばかりなので「ああ、やっぱりヒットしなかったか」「そらそうだよな」と納得していたのですが、ちょっと待って下さいよ、と。
いくらビッグビジネスとはいえ、映画撮るのに50億円掛かりますかね!?いやいや、知りませんけど、あんな映画に50億掛からないでしょ、という暴言はさておき、無知な私が適当に調べて出てきた数字だと、36億円くらいだそうです。それでもえげつないお金を一体どこに掛けているんだと思いますが、単純に、14億円の黒字です。あれだけ原作ファンが怒り狂い、罵倒され、けなされ、目標としていた興行収入に全く届かなかったとう結果を残してさえ、黒字なのです。
これはもう原作の力、そして出演された俳優さんが持つ固定ファンの力ですと言い切って差支えないと思います。
という事はですよ。内容がどうであれ、人気のある漫画を実写化すれば、良し悪しに関わらず興味本位で見に来る人が一定数いるという現実がある程度計算できる訳です。
そして映画製作の場において、「この原作でこのキャストなら、予算はここまで出せます」という事も最初の段階で決まっており、その中であーだこーだ言いながら妥協妥協で作っているのが目に見えるようです。
映画製作というと、やはり今でも「熱意のある監督と俳優が面白いものを創ろうと戦っている」イメージがありますが、こと漫画原作の映画化に関しては、その考えは古いのではないでしょうか。
もっとビジネス。もっとシンプル。原作レイプだろうがなんだろうが、作ってしまえば儲かる。
いやー、納得です。あくまでも憶測ですけどね。そう思えば、納得できますよ、原作愛をちっとも感じない理由が。
「キングダム」は少年が主人公ですし、序盤はそこまで体付きもガッシリしていません。なので山崎賢人さんで問題はないかと思います(演技を見た事がないので、あくまでルックスの話をしています)。
しかしジョジョは、無いでしょう。今の映画製作の軽薄な流れに逆らい、原作愛を持ってジョジョマニマを黙らせる映画を創ってやるという気概がもしあれば、申し訳ないですが、山崎賢人さんを選ぶ筈はないです。
例えば北村一輝がルックスだけで言えば最も承太郎に近い。年齢は全然違いますが、話の舞台はほとんど海外なので、脇を固める同行者達も同じような高身長ガッシリ体系のオッサンで揃えてしまえば違和感はありません。原作絵が大分濃いですからね、それに負けないキャスティングとなると若いイケメン俳優を起用している場合でないんです。そんな事は、制作サイドも絶対に分かっています。分かっていますが、ビジネスの計算上、出た答えが山崎賢人さんなのです。山崎さん本人は「うわー、まじかー、また俺かー、絶対叩かれる、えー、ジョジョーー??嘘ーーー」と思っているでしょう。しかし「君なら黒字になるよ」と言われている以上やるしかないのです。因果な商売ですね。
ジョジョの熱心なマニア層はおそらく30代、40代のオッサン連中です。中途半端な作りでは、彼らは(私も含めて)断固として見に行きはしません。拘りの強い彼らを納得させる映画を創るには、時間と労力が、計算上叩き出せる興行収入では賄えない、という事です。そして熱意も、技術も、やる気も、そんなにはない、という姿勢が、このキャスティング一発で露呈していました。
もちろん、山崎賢人さんに非はありません。それは彼の名誉の為に断言できます。


悪いのはお金儲けの計算だけで映画を捉えていえる制作委員会です。