ANVIL!

普段あまり泣く事はありません。という前フリで始まると、もうお分かりですね。そうです、泣いた話。
感動的な映画を見ても泣かないのは、自分なりに考えた結果、その物語なり出来事なりが、自分の中にある核と共鳴しないと感動しない、という事。当たり前のことのように思えますが、実際映画好きを自称していて「ライフイズビューティフルで泣けなかった」と言うと、どれくらい泣かないか、分かってもらえるでしょうか?
作られた物語、という時点でどうも感情移入が深く出来なかったり。
楽しめていない、というわけではないんですけどね。
ただ、ライブでは良く泣きます。しかも人とは違ったポイントで泣いたりもします。感情的ではなく、ただ真摯に、ひたすら一点を見据えてドラムを叩く姿に涙が止まらなくなったり、感情むき出しで歌うボーカリストが不意に、ニコっと笑ったりすると。
おそらく自分の中にある、これまで生きてきた道すがらに味わった感情が、グイっと押されたりするんでしょうね。巧く言えませんが。
そういう感情を、今回映画で味わいました。
それが「ANVIL! 夢を諦めきれない男たち」。
80年代に活躍したヘヴィメタルバンド、ANVIL。当時競演し、一躍スターダムに伸し上がったBON JOVIメタリカのラーズ(ドラムス)、元ガンズのスラッシュ(ギタリスト)達が口を揃えて言う。
「彼らは衝撃的だった」「何故彼らが売れなかったのか分からない」
当時たくさんのバンドマン達に影響を与え、刺激したカリスマバンドANVILは、今、メンバーが50才を迎え、地元カナダで一般人と同じように働き、家のローンも払えないような極貧生活を送っている。
それでも彼らは夢を諦めない、諦められない。
ドキュメンタリーとして撮影されたロードムービーです。
熱いです。滑稽です。笑えます、そしてグイっと感情を押されます。
是非見て欲しいのでこれ以上内容には触れたくないのですが、この映画のテーマとしてある「夢」。そして「絆」「家族愛」がとても印象的に映されている、ボーカル・リップスと彼のお姉さんの話は、是非見て、感じて欲しい場面です。
50代にもなってさ、金もない、未来も少ない、それでも、
「俺達はロックスターになるんだ!」
なんて台詞、大真面目に、涙目で、叫ぶ。
人は、彼らが売れなかったのは単に才能がなかったからだ、とか、言うけれど。
時代にそぐわない後れた音楽を自信たっぷりレコード会社に聴かせて見せる彼らに、悲哀に似た感情を持つこともある。
だけど見て欲しい、感じて欲しいのはそこじゃないんですよね。
前だけを見て、感謝を忘れず、不安に苦悩し、感情をぶつけ合い、それでも一生懸命乗り越える。
「今しかないんだよ、だから今やるんだよ」
50歳になっても、そんな事言っていたいな。
そして最後に、エンディングで彼らに小さくても、拍手を送って欲しいですね。
いやー、泣けたな。これは。