こういう日はなんて呼ぶの?

お客さんの数はそうでもないのに、一人やたらと忙しくしてました。電話を取る率が異常に高く、一本の電話を5,6分掛けて対応し(それでも丁寧に、それでいてかなり早く処理している方)終わって切った瞬間掛かってくる、というのを繰り返してると一向に自分の仕事が進まない。シーズン向けのセットや、新年度版の就職・資格の新刊セット、補充分の品出し、姉妹店の店長との電話での会議、シフト制作、やる事多いぞ馬鹿野郎。

愚痴はこのくらいにして。

講談社刊「東京怪童」望月ミネタロウ著。
あんれ?ミネタロウ?ずっと峯太郎だったのになんでカタカナ?おかげで新刊出たの見た瞬間には気付かなかったよ。映画にもなった「ドラゴンヘッド」描いた人ですね。この先生の愛読歴も長いよ〜。古くは「バタアシ金魚」「お茶の間」とか、映画にもなったしね。ついこないだまで「万祝」やってた気がしたけど、もう新刊出たのか。「ドラゴンヘッド」が連載飛びまくりだっただけに、早く感じてしまう。
バタアシ金魚」「お茶の間」「バイクメ〜ン」「鮫肌男と桃尻女」「座敷女」「ずっと先の話」「ドラゴンヘッド」「万祝い」全部持ってるわー。…気になったのでwiki見てみたらこれで全部だった。コンプリートだ。これは…立派にファンですよね?考えてみたら、めっちゃくちゃ好きだわ。何一つ悪い点思いつかないし。まあ長いキャリアの割に作品少ないし、遅筆なのを思うともっと読みたい願望がイコール好きだ!ってことにもなるしね。
しかし作品を生み出す度に、カラーが変わっていくのが凄い。「バタアシ金魚」「お茶の間」あたりまでは青春、ギャグのラブコメイメージ。「バイクメ〜ン」で不条理に走り、シュールの魁となったw 「鮫肌男〜」でマジなのかギャグなのか分からない大人の世界を描き、「座敷女」で歴史に残るホラーを描いた。「ドラゴンヘッド」で少年漫画の枠を超えたスケールのデカイ完璧なストーリー漫画を完成させ、「万祝」でワンピースを嘲笑うかのような本気の海賊を夢一杯に描ききり、この「東京怪童」へと到る。こう並べて書くと、見事に全部世界をずらして、そのどれもを完成度の高い作品として世に出している。本当に面白いんですよ、この人の漫画って。絵がね、凄く丁寧で、大切に描いてるなーって思う。毎度思う。昔の作品見ると確かに画風変わってきてるんですけど、自分の作品を、キャラを愛してるなーって思わせる点は全然変わってない。そして作品のひとつひとつ、アイデア一発で描いてるんじゃなく、ちゃんと芯がある。漫画好きにはたまらない作家だと思う。売り上げがなー、今ひとつ追いついてない気がしないでもないけど、このマニアックさも実は嬉しかったりする。自分の本当に好きなものって、あんまり一般受けして欲しくないからね。
で、「東京怪童」。
脳に問題を持った青少年達の治療兼精神的ケアを目的とした施設を舞台にした物語。文章にすると危ういんですけど、漫画で読んでも危うい。こういうのを、ヒロイックに、一種の「武器」としてファンタジーにしない所が凄い。1巻が出た所なんでこの先どう展開するのか分からないけど、1巻の最後で不覚に泣きそうになった。結構ドライな絵柄を描く人なんですけど、だからかなー、泣かそうと思ってない分いきなり来るんですよね。びびった。ふわっと、涙が上がってくる感じにヒヤリとした。
・感じた事思った事をなんでも口に出してしまう青年ハシ。
・人前でも勝手に突然オーガズムが来てしまう大学生ハナ。
・自分以外の人間を脳が認識しない、この世で一人の世界で生きてる6歳の少女マリ。
・自分をスーパーマンだと思い万能感を持っている10歳の英雄。
これらの登場人物4人は皆そんな症状を持った病人なのだが、言うなればそれ以外普通の人間となんらかわりない。周囲の人間と、自分との違いに苦しみながら生きていたり、自覚すらなかったり。悪の秘密結社と戦いもしないし、手から光線出したりもしない。普通の、人間。苦しいし、痛いし、愛して欲しい。
なんかね、最近日記にも書いたけど、こういう差別や己と他人の違い、みたいなテーマが続けて自分の中に入って来る事にちょっと驚いた。意味のある偶然の一致、ですかね。また宝物がひとつ増えそうです。