「言葉を残そう」

ブログ版非公開

人間に戻りたーい

人たちがたくさん出てくる小説。
朝日ソノラマ「キマイラ」シリーズ、夢枕獏著。
(当時持ってた文庫の表紙をみつけたので→)

一番最初に読んだ10代の頃、手にしたものは文庫版で、名前も確か「幻獣少年 キマイラ」という名前だったはず。この作品出版形態を色々変えて出まくってるんですが、最近また復刻が始まり、懐かしくなってノベルス(新書サイズ)を買って読んでます。なんとか定期的に出てるのでしばらくは楽しめそうですが、また途中で止まるんだろうな。現在進行形で書いてるのかな、この先生は。

初めて手にした時の衝撃は忘れられない。音楽もそういう事あるけど、インパクトが強すぎると内容と一緒に当時の思い出も同時にインプットされるじゃないですか。このCDを聴くとあの頃の恋愛を思い出すとか、青春時代が甦るみたいな。
この怪奇極まりない群像伝奇を読み始めた瞬間、確か大阪の国立病院で診察待ちをしていた。
母親と一緒に。幼少からの持病を定期的に診てもらうための通院だったように思う。待つ事には慣れている母が隣に座って何をするでもなく時を過ごし、自分は耳にイヤホンを突っ込んで名前を書くのも恥ずかしい当時のJ−POPを聞きながらページを捲った。
落下するような感覚で、どっぷり嵌った。
病院て、しかも大きな国立病院のイチ待合室って、診察室の前の個室よりも前に、所狭しとプラスティックの椅子が並んだ空間があるじゃないですか。駅のホームの椅子みたいな奴が廊下の脇に整然とならんで。その端っこに座ってね。夕方前の静かな時間。
生々しくて、血の匂いが行間から立ち昇ってきそうな文体と、子供の頃初めて接するエログロ、躍動感。天野喜孝の強烈な挿画。じっくり腰をすえて読むような時間ではないはずなのに、完璧に本の世界に落ちてった。

格闘、エロス、怪奇、冒険、青春、恋愛、そのすべてをぐちゃぐちゃに混ぜ合わせて、全部の要素をランダムに配列して、破綻なく紡いで、色褪せない時代を超えた物語。
今も読み続けているからストーリーは頭にしっかり入ってるんだけど、この作品は物語の面白さを超えた空気がずっと漂い続けてるんですよね。どれだけ面白い物語なんです、と力説するよりも、その妖しい空気感をなんとかして伝えたいような、そんな作品です。