黄昏ドライブ

仕事上お客のクレームに悩まされることはしょっちゅう。
今日の内容は、買ったばかりの商品の中身が無残に傷ついている、というもの。幸い同じ商品が店内にあったものの、店から家までが遠いのと、こちらは何も悪くはないのだから、今から持って来い、との申し付け。
これはもう断れない。断りようはあるものの、自分の信条としては、断れない。

クレームの内容もさまざまな世の中になったけど、基本的に客に落ち度なくこちらに非がある場合(厳密にはこちらも事前に気付くのが難しいのだけれど)、誠意を見せなければいけないと思う。
店から距離がある分、お客の家までのガス代を考えれば郵送した方が安上がりなのは間違いないが、客が来いと言う上に、手間やお金を惜しんで郵送にしたのでは丸く治め辛いものがある。
要は気持ちなのだから。
迅速に、誠意を持って、どこまで歩み寄れるか。

立場上、取締役を除けば現場のトップ。ここは己の信条通り、もって行くことにした。
午後6時前から出発して、夕暮れの町をド田舎に向かって爆走。
混み合う国道を抜けてだだっぴろい田舎道をひた走る。
経験上、実際申しつけ通り商品を持って謝罪に行けば、大概笑って許してもらえる事は知っているから、そんなに気持ちはしんどくない。
それこそ郵送にした方が、相手方の顔が見れない分嫌な気持ちが続くというものだ。
走り慣れない道をどんどん進み、1時間。
車で1時間は結構遠い。
到着する頃には日も暮れて、外は寒くなってきた。
国道脇に車を止めて、お客の家まではかなり歩く。
大きな川を渡った対岸が家らしいのだが、そちらへ渡るには車では通れない一本の細長い橋。300メートルはあったか。眼下に見える川面までは50メートルはあったろうか。
凄い所へ来たもんだ。
電話でやりとししつつ、ようやく面会。
思惑通り笑って許してもらい、労をねぎらってもらい、ホッと一息。
やはり間違ってなかったな、来て正解だったと思いながら、急いで戻る。

もちろんお客の家から車に戻るにはもう一度細長い橋を渡らねばならない。
ここでどうしても我慢が出来ず、立ち●ョンをば。
開放的。
肩の荷も下りて、安堵したからか、どうにも我慢が出来ず、はしたないったらっ。
辺りを気にしつつ用を足しながら、

「まあ、こんな日もありっちゃー、…」

などと思いつつ、爆走逆戻りでありました。